19/06/28追記 ついに完結しました!最終巻の感想はこちらです。
マンガ語りシリーズ第2弾『ユーベルブラット』
えー、吉田直樹が好きなマンガを語るシリーズ その2は、塩野干支郎次(しおの えとろうじ)先生の「Übel Blatt(ユーベルブラット)」になりました。以下、タイトル名についてはカタカナ表記のみで『ユーベルブラット』としておきます。
『ユーベルブラット』とは(Wikipedia から引用)
『ユーベルブラット』は、塩野干支郎次による日本のファンタジー漫画作品。タイトルはドイツ語で「邪悪な刃」を意味する。
概要
「最凶のダーク・ファンタジー」を謳い、復讐のために蘇った主人公ケインツェルの壮大な復讐劇を描く。2004年にスクウェア・エニックスの発行する季刊の漫画雑誌『ガンガンYG』の壱号から参号までに3話分掲載。同04年12月、『ガンガンYG』の後継誌となる月2回刊誌『ヤングガンガン』の創刊号から引き続き連載された。暫く休載が続いていたが、2011年8月には『増刊ヤングガンガンビッグ』 vol.3にて掲載され、同11年12月創刊の後継誌『月刊ビッグガンガン』2012Vol.01にて連載が再開された。
単行本はヤングガンガンコミックスより第0巻から第19巻までの計20冊が刊行されている(2016年12月24日時点)。
(ユーベルブラット – Wikipedia から引用)
Wikipediaの概要にも書いてあるとおり、ジャンルはダーク・ファンタジーです。Wikipedia では 計20冊となっていますが、その後、第20巻が刊行されていて、さらに2018年2月に21巻が発売されます。
『ユーベルブラット』のふわっとしたあらすじ(ネタバレもあり)
舞台は、魔法や魔物が存在し中世の雰囲気漂うサーランディエンという世界にあるサーラント帝国。帝国は、結界を超えて襲来してくる魔物の脅威にさらされていました。
それだけでもしんどいのに、なんと魔物を押さえ込んでいた結界の効力が弱まりこのままでは魔物がさらに帝国を襲ってくるようになってしまう、という危機から物語が進展していきます。
帝国の皇帝は14人の勇者を選び、弱まった結界にふたたび元の力を取り戻してくるという使命を与えます。結界の元になっているものは魔物の領域の中にあるので、使命の達成には魔物の領域に乗り込んでいかねばならず相当の困難が予想される、というシチュエーションです。
使命の旅の途中、14人の勇者のうち3人が命を落とします。ここは俺にまかせてお前達は先に行け的なやつです。
で、7人は旅の終盤で挫折して使命の達成を断念します。ポジティブな、好意的な断念ではなく怖気づいて使命を投げ出してしまうパターンですね。
で、で、主人公も含んだ残りの勇者4人だけでなんとかかんとか使命を果たすのですが、波乱が起きるのはここから。
使命を果たした4人がふらふらの状態で戻ってくると先ほどの7名が待ち伏せていて、自分達が使命の達成を放棄したことを皇帝に知られたくないがために4人を殺してしまうのです。
で、で、で、さらにさらにその7名は自分達が使命を達成したことにして、逆に4人が裏切った(から殺した)的な濡れ衣をかぶせます。
当代随一の剣士だった主人公は殺されかけたのですがとある方法で姿を変えてなんとか生き延びます。そしてなんとかんとか帝国に戻った主人公は裏切りの7人が英雄として讃えられ(ずばり七英雄と呼ばれるようになります)、真実は使命を果たしたはずの4人が逆に裏切り者とされていることを知って憤り復讐として七英雄を殺すことを誓いひとり立ち向かっていく…。
というストーリーになっています。勇者のうち7人が裏切っちゃうっていうのがはネタバレかと思いましたが、コミックスを読み返してみたら冒頭が裏切りのシーンから始まっていたのでそんなネタバレでもなかったです。
『ユーベルブラット』を知ったきっかけ
きっかけというか読み始めた理由はとても簡単で、『ユーベルブラット』が連載されていた雑誌『ヤングガンガン』を、連載当時は毎号買って読んでいたからです。
あの頃は、少年ジャンプ・少年サンデー・少年マガジン・少年チャンピオン・ヤングジャンプにあと何を買っていたっけな。たまにスピリッツも買ってたもしれません。ヤングマガジンはほとんど買った記憶がないですが、コンビニで立ち読みはしていたような気がします。とにかくほぼ毎日何かしらマンガ雑誌を買っていました。あとは、コンビニによくあるペーパーバック(コンビニコミックというらしいです)もよく買ってました。こち亀、鉄火のジャン、ギャラリーフェイクとか。
あ、今さっき『ヤングガンガン』のWikipediaで本紙で読んでいた記憶のあるタイトルを見てみた感じでは、おそらく2005年~2008年か2009年くらいまではずっと買っていたっぽいですね。あ~、懐かしい。『ヤングガンガン』は懐かしいタイトルがたくさんありますね。そうだ、『ヤングガンガン』といったら『WORKING!!』の感想もまた書きたいな。
自分は、学生の頃からずっと「家に帰るのに何か楽しみがないとなんかつまらない」っていう気持ちがあって、その楽しみっていうのが「マンガを1~2冊買って家に帰ってそれを読む」っていうのがほとんどでした。あ、そういえば学生の頃はマンガ以外にラノベ(ライトノベル)もたくさん読みました。当時はラノベじゃなくてティーンズ文庫っていう呼び方だった気がする。角川スニーカー文庫、富士見ファンタジア文庫、朝日ソノラマ文庫、いや~懐かしい。
やばい、思い出しの連鎖でどんどん話がそれていきそう (^^ゞ
話を戻すと、当時住んでた場所は気軽に立ち寄れる距離に本屋がなかったので、コンビニで雑誌を買って帰ることが次第に多くなって、その時たまたま『ヤングガンガン』を見かけて買うようになったことが『ユーベルブラット』を読み始めたきっかけだった、という話でした。
『ユーベルブラット』をおすすめする語りたい理由
最初、何も考えずに小見出しを「おすすめする理由」にしてしまいましたが、よく考えたら別にマンガをおすすめするつもりで書いているんじゃなくただ単に語るだけなので慌てて「語りたい理由」に変更しました。
なんで語りたいのかというとやはり自分は好きな作品だからです。自分は好きだからこそ、こうやって投稿して『ユーベルブラット』に関する情報を少しでも増やして「ユーベルブラット読んでみようかな」と思ってもらえるチャンスを増やそうというのが狙い。そんでもって、人から「読んでみようかな」と思ってもらえる文章を書けるようたくさん書いて文章力を磨きたいというのもこれまた目的だったりします。
『ユーベルブラット』を知らない人には知ってほしい(語りたい!紹介したい!)とは思いますが、ただ、「読めばみんなきっと面白いと思う」「もっと評価されるべき」かと言われるとややおすすめはしづらいクセのある作品だと思います (^^ゞ
『ユーベルブラット』がおすすめしづらい理由①
繰り返しになりますが『ユーベルブラット』のジャンルはダーク・ファンタジーです。
「ダーク」はいったん置いておいて「ファンタジー」の部分に目を向けると『ユーベルブラット』はまさに王道。剣と魔法に魔物や妖精が登場する王道をいくファンタジー世界が作品の中で描かれています。「ファンタジー ≒ 剣と魔法」でもないので、ヒロイック・ファンタジーの王道という方が正しいのですかね¯\_(ツ)_/¯
それはさておき、肝心の「ダーク」の部分に話を戻すと『ユーベルブラット』は「主人公が元は仲間だった7人への復讐を誓い順番に殺しにいく」というストーリーです。
この時点でまず倒すべき相手が同じ人間であるということになります。しかも7人全員が領主になっているので部下の騎士や兵隊がたくさんいてもちろん領主を殺そうとする主人公の前に立ちふさがるわけですが彼らももちろん人間です。ボスが人間で中ボスも手下も人間です。魔物に変身する敵もいるので全部が全部人間のままってわけではないですが。
『ユーベルブラット』の物語では「剣や魔法で魔物を倒す」シーンよりも「人と人が剣で戦う殺し合う」というシーンが圧倒的に多いです。あとは艦隊戦とか攻城戦ばっかり。このあたりは魔物やら魔王やらを倒すことが目的のRPGゲームの感覚とはちょっと異なります。戦闘のシーンでは、血しぶきも飛べば中身が飛び出す描写も書き込まれてますが、それらが魔物のものではなく人間のものですから物語としてはどことなく生臭い感じがします。
ただ、物語としてはって書いた通り、話としては「ダーク」なんですが、もう一方で女の子がとてもかわいい塩野干支郎次先生が描く『ユーベルブラット』は残酷なシーンであっても絵柄から受ける印象はとってもマイルド。登場人物の痛みが伝わってきて思わず顔をしかめるとかそういうことはまったくありません。見ていてちっとも痛そうじゃないので、グロいのや痛いのとかはダメっていう人でも特に問題なく読めると思います。
いかにもマンガを読んでいる(絵物語の中のできごと)っていう感じが、良く言えば読みやすく、悪く言えばひとつひとつのシーンが強烈に印象として残ることもありません。そういうおとなしい感じが『ユーベルブラット』がこれまで誰もが知ってるほどの話題作にはなっていない理由のひとつじゃなかろうかって思います。
『ユーベルブラット』がおすすめしづらい理由②
敵役の7人は、不老長寿を求めて密かに人体実験を繰り返してたり帝国を我が物にしようと権力振りかざしたりあの時裏切ったけど俺は悪くないと言い逃れしたり、それぞれがわかりやすくゲスいので、読者の心情としては常に主人公側に立つことができます。
復讐を続けることに主人公がちょびっと弱気になるシーンもあったりはしますが、王道のファンタジーなので、少ししたら7人はゲスいことをして復讐心を煽ってくるので主人公は決心をあらたに剣をとって立ち向かっていきます。ホラーとか人間の内面を描く作品じゃないので別に復讐に囚われた人間の葛藤とか精神が崩壊していくストーリー展開なんかはもちろんありません(^^ゞ
主人公は裏切り者の汚名を着せられています(あとはそうそう、世間的には裏切った際に7人に殺されたと思われてます)。しかし、旅の途中で真実を知り主人公の仲間も少しずつ増えていきます。まさに勧善懲悪、これもまたファンタジーの王道ではないでしょうか。
『ユーベルブラット』は復讐が目的ではあるものの、結局のところは主人公が冒険の旅の途中で仲間を増やしながらいずれ使命を達成(まだ完結してないけど)するということをふくめ、とにかく王道のファンタジーであることこそが魅力なんだろうと思います。
良く言えばそれこそ王道だけど悪く言えばそれこそちょっと古臭い。
※以下ちょっとネタバレ含みます
『ユーベルブラット』の話には、竜がでてきたり、かつて当代随一の剣士だった主人公にしか使えない剣術の奥義があったり(それが死んだはずの主人公が実は生きていることの証明になったり)、その奥義を使いこなす新たな若く天才な剣士がライバルとしてでてきたり、その奥義が破られたり(奥義破りの技が編み出されたり)、飛空戦艦や飛空城がでてきたり、商業が盛んな自由都市が権力者に侵略されそうになったりと、なんとも「別の作品にもそういうのあった!」と思える要素がてんこもりで新しさよりも懐かしさをものすごく感じます。
※ネタバレここまで
きっと今、『ユーベルブラット』を読んで面白いと感じる人っていうのは元々ファンタジーが大好きで、海外だったら『指輪物語』とか『ドラゴンランス(読んだことないけど)』とか、国内だったらやっぱり『ロードス島戦記』とか『グイン・サーガ』や最近マンガ連載されている『アルスラーン戦記』とか、もうちょっと新しいタイトルっていっても『スレイヤーズ』とかそうそう忘れちゃいけない『ソード・ワールド』シリーズとかを読んでいた人たちなんじゃないでしょうか。
そして『ユーベルブラット』はタイトル見ただけでいかにも「ちょっと昔」とわかるこれらの作品と同じ物語をあらためて今描こうとしているんじゃないでしょうか。
そりゃあ万人受けするとは到底思えない(^^ゞ
『ユーベルブラット』を読み続ける意義
ただ、西暦2018年の今の世の中で、マンガで読める王道ファンタジーって他に何があるんでしょうっていう話ですよ。あ、『アルスラーン戦記』は読めるようになりましたね、うん、あれは面白いです読んでますもちろん買ってます。
古典の名作が数知れずあり、今はさらにそこからもう少しヒネった名作も数知れずある世の中です。従来のファンタジーな世界観に現代社会の知識と経験を持ち込んだら化学反応が起きて物語が面白くなったってのが「異世界転生モノ」だったりするんだと思いますが、そういう新しいジャンルでもすごく面白いタイトルがいっぱいある中で、あえてそれよりも昔のエッセンスを効かせに効かせまくった物語も読みたいなってなったら、完全オリジナルストーリーの『ユーベルブラット』は最有力に近いんじゃないですかね。RPGゲームのコミカライズというのも選択肢にはありそうですが (^^ゞ
そして最後に。
『ユーベルブラット』をもっと評価してもよいんじゃないかって思えるもうひとつの要素は「ちゃんと完結しそう」だってことです。
連載誌が変わりつつも描き続けてくださる塩野干支郎次先生には尊敬と感謝の念を禁じえません。『ヤングガンガン』で休載が続くようになった時は「あ、これは完結しないかも」と思ったのも今となっては思い出のひとつですね(^^ゞ
物語の終焉までちゃんとつきあわせてくれそうな『ユーベルブラット』にはちゃんと最後までつきあって行きたいと思います^^
はてさて、もうひとつのダーク・ファンタジーの名作は自分が生きている間に完結するのかなぁ~。
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