iメンター(1) – 読んだマンガをひたすら挙げていく【90冊目】

読んだもの

読んでみる iメンター(1) – BOOK☆WALKER

今回は、講談社のモーニング・ツーにて連載中(2020年9月時点)の小出もと貴先生の iメンター(アイメンター) すべては遺伝子に支配されたを紹介します。

もともと小出もと貴先生のサイコろまんちかがものすごい好きで何回も繰り返し読んでいるくらい大好きでした。なぜ冒頭でそれに触れるかというと、サイコろまんちかは「心理学×学園コメディー」マンガなんですが、この心理学の要素がとても上手に(コメディーなのでおもしろおかしく)描かれていて、「あぁ、小出もと貴先生は心理学に詳しいのだな」とずっと思っておりました。

この心理学の要素を上手にマンガに活かす感じが、小出もと貴先生の作品を語る上で重要だと常々考えていたので冒頭で触れさせていただきました。ではでは本題に入ります。

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【あらすじ・ネタバレ・感想】

iメンター公式のツイッターアカウントがこちら

iメンター すべては遺伝子に支配された/最新1巻発売しました!

そして、こちらが作者の小出もと貴先生のツイッターアカウントです。先生がツイッターアカウントを開設したのは2020年8月からなんですが、あっというまのフォロワー2.3万人です。

小出もと貴@『iメンター』第1巻発売中です

iメンターとは?

普段お世話になっているWikipediaにはまだiメンターの項目がないので、ここでは公式サイトからの紹介を引用します。

iメンターは24時間365日、常に正しく道を照らします。“暮らしの水先案内人”に人生の決断を委ねよう——。

最新の遺伝子情報を基に、「iメンター」と呼ばれるタブレットが人間に的確なアドバイスをする近未来。
将来の夢は叶うのか、このひとは最良の結婚相手なのか。自分は、いつ死ぬのか。
iメンターは全て数字で、「正しい生き方」を教えてくれる。
本当に人間の幸せは「遺伝子」だけで決定されてしまうのか?

iメンターに管理された「理想郷」で、「数字」という現実を突きつけられた人間たちの尊厳を問う、SFオムニバス!

iメンター|モーニング公式サイト – 講談社の青年漫画誌

「iメンター」と呼ばれる端末を通じてシステムによって人々の生活が監視・管理される社会、いわゆるディストピアを描いたマンガです。

ディストピアという言葉についても、念のためWikipediaから引用しておきます。

ディストピアとは?

ディストピアまたはデストピア(英語: dystopia)は、ユートピア(理想郷)の正反対の社会である。一般的には、SFなどで空想的な未来として描かれる、否定的で反ユートピアの要素を持つ社会という着想で、その内容は政治的・社会的な様々な課題を背景としている場合が多い。

主な特徴

平等で秩序正しく、貧困や紛争もない理想的な社会に見えるが、実態は徹底的な管理・統制が敷かれ、自由も外見のみであったり、人としての尊厳や人間性がどこかで否定されている。その描写は作品毎に異なるが、典型的なパターンとして以下のような問題点がやがて描き出されていく。

粛清がある。体制(指導者)が自らの政治体制をプロパガンダで「理想社会」に見せかけ国民を洗脳し、体制に反抗する者には治安組織(準軍事組織)が制裁を加え社会から排除する。

表現の自由が損なわれており、社会に有害と見なされた出版物は発禁・焚書・没収されることがある。

格差社会が存在する。社会の担い手と認められた市民階級の下に、人間扱いされない貧困階級・賤民が存在し、事実上は貧富の差が激しい社会となっている。

市民社会では貧困の根絶が達成されたことになっているが、実際には社会の統制の枠から爪弾きにされた者たちが極貧層となる。それらの者たちによりスラムが形成されるも、中央政府によって市民の目の届かぬ地域に隔離されている。

社会の枠の中で暮らす市民階級について、体制が市民階級を血統やDNAのレベルで把握・管理している。

産児制限が行なわれる。強制的に人口を調整ないし維持する必要があり、市民の家族計画、さらには恋愛・性行為や妊娠・出産など人類の繁殖にまつわる部分さえ社会によって管理されている。

ディストピア – Wikipedia

自分もディストピアいいたいだけであんまりよくわかっていなかったのですが、Wikipediaに書いてあるとおりだと、ディストピアとは「ユートピア(理想郷)」の反対を意味するそうです。「ユートピアだと思った?」「残念ディストピアでした」という感じを表すみたいですね。社会にひもづくから、例えば北斗の拳に描かれるような世紀末はディストピアじゃない…のかな?

iメンター 1巻のエピソード

iメンター 1巻に収録されているエピソードは以下の通り。

  • Case1 婚姻遺伝子
  • Case2 犯罪遺伝子
  • Case3 就職遺伝子

サブタイトルからそれぞれのエピソードの雰囲気が伝わってきますね。「婚姻」「犯罪」「就職」がなんか遺伝子的なもので管理されちゃうお話が載っていそうです(そのまんま)

3話で一冊になることからわかるとおり、それぞれのお話は60ページほどのボリュームがあって読み応えは相当あります。

1話のカンタンなあらすじ

1話の主人公は小説家になる夢を持っている朝地甲介。甲介は、中学に入学し初めて支給されたiメンターによる職業適性値「小説家3%」というあまりにも低い数値に絶望し、同時に判明した結婚相性度「100%」という運命の相手ともすれ違ってしまいます。

最初は自分の夢を否定したiメンターに反発しようとした甲介でしたが、iメンターの指摘が正しいことを目の当たりにしその便利さや安心感に判断を任せるようになっていき…

大人になりiメンターをすっかり信頼するようになった甲介でしたが、ほんの1%や2%という数字で結婚を考えていた相手に振られてしまい、やけになっている時に中学時代の結婚相性度「100%」の相手と再会します。

すぐに二人は恋人同士になりますが、彼女には秘密があり…

といったお話です。

1話のみですが、2020年9月現在、以下のサイトでお試し無料で読むことができます。移転前の公式サイトらしく今後いつまで読めるかはわかりません、1話が全部(しかもカラーで!)掲載されているので今だけの特典ということで。

iメンターを読んだことのない人がまず気をつけないといけないのが、iメンターのストーリーはつながっているということです。

公式の紹介にも「SFオムニバス」という記述があるので、電子コミックサイトなどでお試し分を読んだだけだと、前作の「アイリウム」と同じく、同じ題材を扱った1話完結型の短編集に見えてしまうかもしれません。

もしも

ストーリー物をガッツリ読みたいのに、iメンターはオムニバスか…

と思っちゃう人がいたら安心してください。iメンターはちゃんとガッツリしたストーリーとしても楽しめます。各話で中心となる人物は替わりますが、各回のラストにはちゃんとヒキもあります。1話完結ではないのでオムニバス形式かもしれませんがオムニバスではなく、読み応えのあるストーリーを楽しむことができるマンガになっていますよ、ハイ

iメンターのおもしろいところ

叙述的トリックも感じるストーリー展開

iメンターのおもしろさは、そのストーリー展開にあると思います。

ミステリーでいうところのトリックが暴かれる瞬間
起承転結でいうところの「転」にあたる部分

があって話を盛り上げてくれます。そう、毎回のお話に「ネタばらし」があるんです。前作の「アイリウム」もそんなお話でしたし、きっと小出もと貴先生はそういうストーリーの作り方が得意なんだろうと思います。

このネタばらし(種明かしという言い方でもいいかも)を行うために登場人物は思考や行動をふりまわされ、それを読んでいる自分たちも釣られてふりまわされてしまうのです。

犯人が誰かを考えながら読むのがミステリーの楽しみ

っていうのはあると思いますが、iメンターも「この展開からするとオチはこうかな」と想像しながら読み進めていき結果が予想通りだったか予想外だったかを楽しむ、そんなおもしろさがiメンターの魅力だと思います

先生はミステリー好きなのかも

小出もと貴先生はミステリーとか好きなんじゃないかなと。余談かもですが、「アイリウム」「iメンター」を読んでいると感じます。

もともとこのiメンターは、

『利己的な遺伝子』や『ミュージックエックスレイ』、星新一先生の作品『はい』に強い影響を受け、本作『iメンター』の着想に至った。

ということなので、SFやテクノロジーの影響が強いのが本当なんでしょうが、ネタばらしのあるお話づくりとか見ると、先生はミステリーもお好きなんじゃないかなあと思ったりです。

ちなみに、星新一先生の作品『はい』は、ひとにぎりの未来に収録されているそうです、はい。

なぜ「遺伝子」なのか?

最初、iメンターを読んだ時、人間に的確なアドバイスを行うための要素をどうして遺伝子にしたんだろうと思いました。

いや、こういう「的確に人間の未来を予測する」っていう設定の時に使われるのは大半が遺伝子かAIなんで別におかしくはないですし、iメンターでは遺伝子とAIの両方を組み合わせているのでなんら間違ってはいないのですが

今の世の中、どちらかというと「遺伝子によって将来は決まっている」っていわれても同調する認識は弱く、むしろ「AIを使えば将来は予測できる」って言われたほうがまだ納得感が高いと思うのに、なんで遺伝子推しできたのかなあと言うのが気になります。

小説家の職業適性値が遺伝子で測れるなんて、普通だったらちょっとトンデモっぽくて「それで管理できる社会と管理される人間描かれてもちょっと入ってこない」ってなりそうじゃないですか。

まあ、未来予測を魔法とか超能力とか占いで実装しちゃうとSFというよりファンタジーになっちゃうし、未知の物質や理論を持ち出しちゃうとそこからなんでもありになっちゃうから、地に足ついたSFにしようと思うと遺伝子になっちゃうのかもしれませんが、違和感は残るというか…

だから、

(´-`).。oO( これ、今後に訪れるネタばらしのための伏線じゃないのか、だったらいいな )

と思ったり(=そうだとおもしろいな)、思わなかったり(=そうじゃなくてもおもしろいけど)と妄想しています。

静止画のようなコマの連続が緊張感を高めます

小出もと貴先生の描かれるマンガのコマは基本「止め絵」「静止画」が多くデフォルメ表現はあるけれど、マンガ的表現、特に動作を表現したコマはあんまりありません。

動作を表現するってのはあわてて左右を見回す感じを表すのに

 (゚Д゚;≡;゚Д゚) どこ!?

顔を2つ描くみたいなやつ。こういうのがiメンターにはほぼありません(アイリウムもでしたけど)。

サイコろまんちかにはそういう表現のコマもあったので、もともと使わないのではなくiメンター‪では作品にあわせてあえて使っていないのだと思います‬。これがまたiメンターのSF世界ととてもよくマッチしているなあと自分は思うんですよ。

淡々としていてどこか無機質な乾いた感じ…しっかりとした線で全ての対象が描かれたコマはマンガであり絵のようでもある感じ…それらがなんだかモニター越しに風景を見ているような客観的な気分にさせられます。悪くないです。

登場人物が生きているように感じることを抑えられ、誰か特定の登場人物に感情移入してしまうのではなく傍観者目線で「こんな世界があったらどうなるのか?」を考えさせられてしまいます。

これはやっぱりあれですね、ミステリーで誰かが殺されてしまった時、人の死に心を痛めるのではなくトリックは?アリバイは?真犯人は誰だ?と傍観者の意識で居続けるのが普通になる感覚っていえばしっくりくる気がします。

…なんてまあ、ちょっと大仰でこじつけくさかったかもしれません。ホントのところでいうと「登場人物が動かない」って誰かに(誰に?)いわれそうなので、そんなことないですこういう絵の雰囲気もまたいいですよっていいたいだけなのでした。

けっしてSFモノではないところ

iメンターはSFオムニバスを謳っていますが、あくまで

人間たちの尊厳を問う、SFオムニバス!

なので、人間たちの尊厳を問うがためのSFオムニバスであります。だから、けっしてテクノロジーを描こうとしてないことには注意が必要です。そこにこだわるとせっかくのiメンターを楽しむことができないと思います。

例えば、第1話で、甲介が恋人のiメンター端末を彼女が寝ている間に操作するシーンがありますが、通常考えて、個人情報の塊であるiメンターを(恋人とはいえ)第三者が設定操作できるなんてことはないでしょう。ロックがかかっていなかったという説明はできるかもしれませんが、「厳重に鍵のかかった部屋に入らなければストーリーが進展しない状況をはてさてどうする」という時に「実は鍵が開いていた」で解決されるとちょっと安直でおもしろくなくなってしまいます。

(´-`).。oO( あれ?でもそういうシーンよくあるな…ま、それはさておき )

また、iメンターを管理する国の部署があるのですが、部署の人間がマイクを通じて所有者にiメンターのふりをして指示を出すという描写があります。これまたなんてアナログな対応でしょう。

SFにおいて科学的な考察やテクノロジーの描写にこだわる人からすれば「おいおいそんな風にはならないだろう」と疑問が浮かんでしまうんじゃないかと思います。そういった科学考証もマンガなどの楽しみ方のひとつなのは間違いありませんが、iメンターはそういった要素を楽しむマンガではないので、あまりSF描写にこだわりすぎると楽しみ方を間違えるんじゃないかと思います。

まとめ

以上、iメンターのおもしろさをあれこれ勝手に書いてみました。

まとめると、

iメンターはミステリー作品のように先の展開を予測しながら読むのが楽しいマンガ

です。

群像劇なところがあり、話の中心人物も入れ替わります。テクノロジーではなく人間を描こうとしていますが、それは特定の誰かではなく、特定の状況下に置かれた人間がどう考えてどう行動するかを描こうとしていると思いながら読むのが、楽しいんじゃないかと思います。

いずれにせよ、まだまだ単行本の1巻がでたばかり。連載分を除けばお話としては3話しかありません。これからの展開では、長々と書いたことが全然的はずれな(T_T)展開をするかもしれませんし、そこらへんは今後も追っかけていきたいですね

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