マンガ語りシリーズ第3弾『低俗霊狩り』
吉田直樹が好きなマンガを語るシリーズ その3は、奥瀬サキ(おくせさき)先生の「低俗霊狩り」です。
表紙の紹介用として掲載したのは2013年以降にワニブックス〈ガムコミックスプラス〉から刊行されているものです。
Wikipediaによると初版が白泉社からジェッツコミックスとして発行されたのが1987年8月だそうですから、かれこれざっと30年近く経っています。
そりゃそうです。吉田直樹がこの作品を知ったのは、中学~高校生のころ(1990年前後)のことですもん。当時、単行本は未完のままで終わってしまっていました。
自分でたまたま検索したのか Amazon のおすすめとして表示されたのかは忘れてしまいましたが、完全版が出し直されていることを知ったときにはえらく驚きました(^^ゞ
『低俗霊狩り』とは(Wikipedia から引用)
『低俗霊狩り』(ていぞくれいがり)は、奥瀬サキによる日本の漫画。『月刊コミコミ』および『ヤングアニマル』(白泉社)に掲載された。単行本全3巻(文庫版全2巻)。
概要
1986年から1988年まで『月刊コミコミ』にて掲載され、休刊と同時期に中断。同誌がリニューアルされた『月刊アニマルハウス』の期間は中断が続き、その後再度リニューアルされた『ヤングアニマル』にて1992年から1993年まで掲載された。1998年には小学館から文庫版として上下巻2冊構成の再編集版が刊行されている。再録に際して、『月刊コミコミ』休刊時に未完となった連作『自動人形』のエピソードが収録されていない。他方、単行本(白泉社版)では未収録だった『時の狭間』、および以降に発表された短編『恐怖のマミ』と『公園の散歩者1~3』が収録されている。
発表当初のペンネームは「奥瀬早紀」名義であったが、1990年前後に改名され、現在の「奥瀬サキ」名義となっている(白泉社版の第1巻および第2巻は「奥瀬早紀」、第3巻では「奥瀬サキ」となっている)。
書籍以外の媒体で発表されたエピソードに「24 GHOST OF THE SADISTIC DOMINA」「レイプ魔Q」の2編がある。いずれも単行本には未収録。
本作品と同様の「低俗霊」を題材としたスピンオフ作品に、『低俗霊DAYDREAM』『低俗霊MONOPHOBIA』(角川書店)があり、ともに原作を担当している。
(低俗霊狩り – Wikipedia から引用)
『低俗霊狩り』のふわっとしたあらすじ
主人公の流香 魔魅(りゅうか まみ)は口寄(くちよせ)屋の女性です。
口寄とは、霊を自分に降霊(憑依)させて霊の声を聞くこと。現実世界の話で言うと恐山のイタコさんのようなイメージですかね。主人公は、この口寄せを行うことで霊の無念を聞いたり晴らして除霊する仕事をしています。
主人公の流香 魔魅が除霊しようとする悪霊はもちろん事件を起こすんですけどそんな大事件でもなくて、人類の存亡とか東京滅亡の危機とかスペクタクルな感じはほとんどありません。エピソードによっては人が殺されたり人が殺された無念が悪霊になるきっかけだったりするので悲しかったりシリアスだったりはするんですけどね。
ただ、作品タイトルの『低俗霊狩り』が示すとおり、悪霊たちが引き起こす事件にはなぜだか低俗なエロが絡みます(※グロは絡みません(※ゲロは絡みます))。
流香魔魅は自分のことを「低級霊ハンター」と呼んでもらいたがっています。低級霊とは何かという説明は作品の中にはないのですが、一般的(?)には成仏できない霊のことを指すようです。なるほど、そういった悪霊を成仏させることを仕事にしているので「低級霊ハンター」。
なのですが、なぜか彼女のもとに依頼のくる低級霊はエロ(ハレンチっていう表現がしっくりくるかも)な霊障を巻き起こします。高校でスカートめくりを繰り返す悪霊。電車の中で痴漢行為を繰り返す悪霊。そんな悪霊退治の依頼ばかりがやってくるためいつしか人は彼女のことを「低俗霊ハンター」と呼ぶようになりましたとさ。
彼女は作品の中で言います。
「まったく…なんであたしのとこにくる仕事ってこんなのばっかりなのかしら」
『低俗霊狩り』を知ったきっかけ
きっかけは、古本屋で単行本(当時はジェッツコミックスでした)を見かけて買ったのが始まりでした。
いつ頃だったかはまったく覚えていませんが、さっきも書いたとおり中学から高校の間だと思います。当時は休みになると毎週のように地元の本屋と古本屋をはしごしては何か面白いマンガはないものかと探していました。
中学・高校生なので移動手段は自転車で、片道30分くらいかけて2~3駅分くらい移動しては馴染みの本屋や古本屋の棚を端から端まで確認して。で、また片道30分くらいかけて2~3駅分くらいは移動して別の本屋に、の繰り返し。いつも半日くらいかけて4~5店舗を回っていました。毎週行ってるからそんなに新しい漫画が並ぶわけじゃないんですけど、それでもまあよく通ってました。
あの頃見つけて買ってたマンガって何があったかなぁ。当時リアルタイムの連載作品や新刊の単行本を挙げだすとキリがないのでたぶん古本屋きっかけの作品で思い出せるものを書き出してみると、
- イダタツヒコ先生の『外道の書』(ヤングマガジンコミックス)
- 須藤真澄先生の『電気ブラン』(東京三世社)
- 高野 文先生の『絶対安全剃刀―高野文子作品集』(白泉社)
- あさりよしとお先生の『宇宙家族カールビンソン』(少年キャプテンコミックス)
- 唐沢なをき先生の『カスミ伝』(少年キャプテンコミックス)
- 伊藤伸平先生の『楽勝!ハイパードール』(少年キャプテンコミックス)
ああ、そうだそうだ。当時は少年キャプテンコミックスが好きだったなぁ。アフタヌーンコミックスも好きだったからWikipediaとか見に行けば当時好きで読んでたタイトルがまだまだリストアップできそう。・・・やっぱりキリがないですね(^^ゞ
『低俗霊狩り』を語りたいけどオススメしない理由
さてさて話を戻して、自分が『低俗霊狩り』を語りたいのはとにかく個人的に好きだからです。ですが、じゃあ「ぜひ『低俗霊狩り』を読んでほしい!」って他の人にオススメするかと言われると、今はもうそんな感じでもなくなってしまいました。
まず絵柄が古い(って思われるんじゃないかなぁ)という懸念。これは、30年近く昔の作品だって自分が思っているだけだから気にしなくてもよいのかもしれませんが、第一話とかまぁとにかく相当古いという印象です(^^ゞ
奥瀬サキ先生の絵柄自体もどんどん変わっていて、『低俗霊狩り』の最初の方と最後の方ではもう別物と言っていいほど絵柄が変わっていますから、最後まで読めばそのあたり今風になってきていて気にならなくなるのかもしれませんけどね。
それに、Wikipediaにも書いてあるとおりなんだかんだ『低俗霊狩り』はその後スピンオフ作品にとして『低俗霊DAYDREAM』『低俗霊MONOPHOBIA』(角川書店)が刊行されていたりするので、新シリーズが刊行されるくらいには人気があったんだろうと思います。確かに『低俗霊DAYDREAM』の途中くらいまでは自分も単行本を新刊で買ってました。
だから『低俗霊狩り』を読んでおもしろいって思ってる人は意外と多いのかもしれませんが、それでも『低俗霊狩り』を知らなかった人にこれ読んでみてってオススメするほどめっちゃおもしろいかと言われるとそうでもない気もする。
オカルトホラーなんですけどゾクゾクするほどのホラーでもない。「低俗」でハレンチなサービスシーンがありますがサービスシーンっていっても「絵柄が古い」ので特別にエロいなって感じることもありません。コメディ要素もたくさんありますが、でも、別に爆笑するわけでもないし(そもそもギャグじゃなくてコメディなんだから当然だけど)。
悪く言ってるようになってますが『低俗霊狩り』はホント好きなんですよ。
ただ人に対して「おもしろいから読んでみて!」って言えるのって相当おもしろくないと言えないし人それぞれ好みもあるしと思うので、もともと自分の好きを人にオススメすることってほとんどないのでした。
それでも『低俗霊狩り』を語ってしまいます
じゃあ吉田直樹はなぜ『低俗霊狩り』が好きなのかっていうと、それはやっぱり「雰囲気」なんだろうと思います。
『低俗霊狩り』の作品ジャンルはオカルトホラーコメディ(Wikipediaでの表記はオカルト・ストーリー)。
流香魔魅が行う「口寄」もそうですが、オカルト要素については西洋よりは東洋の色合いが強いです。
「悪魔召喚」とかする敵キャラも登場したりしますが、流香魔魅は「臨兵闘者皆陣烈在前」とか「ノウマクサンマンダバザラダン」とかオリエンタルな呪文を唱えます、真言っていうんですかね。
で、逆に西洋の魔術とかっていうのはどうしても「魔法世界」な感じでちょっとファンタジーな雰囲気になってしまうと思うんですよ。
で、で、ホラーってやっぱりリアリティ(身近に本当にいそうな感じ)が恐怖感を醸すので西洋よりも東洋な方がより雰囲気を感じやすいと思うんですよ。
真言は身近なんですか?リアリティあるんですか?って言われてしまうとまあどうなんだろうって話なんですが・・・。
でも、13日の金曜日のジェイソンと切り裂きジャックとトイレの花子さんでどれが怖いと感じるかって話をしたら、それはやっぱりトイレの花子さんだと思うんですよね。だって、ジェイソンはアメリカ行かないと出くわさないし、ジャックはイギリス行かないと出くわさないけど、花子さんは日本の学校にいるんだからよっぽど近くにいるわけじゃないですか。
ホラー小説の「着信アリ」もみんなが日常的に使っている携帯電話が身近だからホラーにリアリティを感じられるし、トイレの花子さんも舞台が学校(学校のトイレ)だから日本人はホラー要素にリアリティを感じられるんです。
ちょっと話がそれかけちゃいましたが、要するに『低俗霊狩り』の東洋風な呪術シーンはとってもホラーな雰囲気を醸し出すのに効果的だってことが語りたいわけでした。
今「口寄屋」でググっても『低俗霊狩り』作品シリーズに関連した情報がほとんどです。
『低俗霊狩り』は、
- ホラー
- コメディ
- シリアス
- ちょいエロ(ハレンチ)
がうまいことひとつになった作品で、こういう世界観で見せている作品って当時から今に至るまであるようで意外と数少ない作品なのかもしれません。
そこが30年経ってまた読みたくなるくらいに好きでいられる要素だとは思うんですが、【完全版】の最終巻5巻まで読んで思うことは、
やっぱり絵柄変わり過ぎだなぁ(^^ゞ
なのでした。当時あの時読みたかったなぁ。でも、未完にならずに最後まで読めてよかったよかった本当によかった^^
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